1週間続くこめかみ頭痛の主な原因と今すぐ試せる対処法について知りたい
1週間もこめかみ周辺に続く頭痛は、日常生活に大きな影響を及ぼし、不安を感じる方も少なくありません。
ここでは、そのような長引くこめかみ頭痛の代表的な原因と、症状緩和のためにご自身ですぐに試すことができる応急処置やセルフケア方法について、詳しく解説します。
原因を正しく理解することが、つらい症状を和らげるための第一歩となりますので、ぜひ参考にしてください。
ストレスや疲労の蓄積による緊張型頭痛の可能性を考えることが大切です
現代社会は、仕事や人間関係、情報過多など、様々なストレス要因に満ちています。
日々の生活で積み重なる精神的なストレスや肉体的な疲労は、無意識のうちに体の筋肉をこわばらせます。
特に、長時間同じ姿勢でのデスクワークやスマートフォンの使用は、首や肩の筋肉、例えば僧帽筋(首の後ろから肩、背中にかけて広がる大きな筋肉)や胸鎖乳突筋(首の横側、耳の後ろから鎖骨にかけて斜めに走る筋肉)といった部分に持続的な負担をかけます。
この筋肉の緊張が長時間続くと、血行が悪化し、疲労物質が蓄積することで、こめかみ周辺に鈍い痛みや頭全体が締め付けられるような圧迫感を感じる緊張型頭痛へと繋がりやすくなるのです。
最近、特に仕事が忙しかったり、心配事が多かったり、精神的なプレッシャーを感じる出来事が続いている場合は、この緊張型頭痛を疑ってみる必要があるでしょう。
また、睡眠不足や不規則な生活リズムも、自律神経のバランスを崩し、結果として頭痛を誘発したり悪化させたりする要因となります。
緊張型頭痛とは?
緊張型頭痛は、もっとも頻度が高いとされる一次性頭痛(頭痛そのものが病気であるタイプ)の一つです。
特徴としては、頭全体がギューッと締め付けられるような、あるいは重い帽子やヘルメットをかぶったような圧迫感や重苦しさが挙げられます。
多くの場合、首や肩のこりを伴い、痛みは数時間から数日間、時にはそれ以上続くこともあります。
吐き気や嘔吐を伴うことは比較的少なく、日常生活への支障は片頭痛ほど大きくないことが多いですが、痛みがだらだらと続くため、慢性化すると集中力の低下や気分の落ち込みなど、生活の質(QOL)を著しく低下させることがあります。
原因としては、身体的ストレス(長時間同じ姿勢、悪い姿勢、運動不足など)と精神的ストレス(悩み、不安、抑うつなど)の両方が関与していると考えられています。
特定の誘因によって引き起こされる片頭痛の症状と見分け方を知っておきましょう
片頭痛は、こめかみや頭の片側(時には両側)に、脈拍に合わせてズキンズキンと波打つような強い痛みが特徴的な頭痛です。
この痛みは数時間から2~3日間続くことがあり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。
片頭痛の際には、吐き気や嘔吐を伴ったり、普段は気にならないような光や音、匂いに対して非常に過敏になったりする症状が現れることがあります。そのため、暗くて静かな場所でじっとしていたくなる方が多いです。
片頭痛は、ストレス、睡眠不足または睡眠過多、特定の食べ物(例えば、チョコレートやチーズ、赤ワインなどに含まれるチラミンやヒスタミンといった血管拡張作用のある成分が関与すると言われています)、急激な天候の変化(特に気圧の低下)、そして女性の場合は月経周期に伴うホルモンバランスの変動など、様々な誘因によって引き起こされることがあります。
また、一部の片頭痛患者さんでは、頭痛が始まる前に「前兆」と呼ばれる特有の症状が現れることがあります。代表的なものに、目の前にチカチカとした光が見える「閃輝暗点(せんきあんてん)」があります。
緊張型頭痛が持続的な鈍い痛みであるのに対し、片頭痛は拍動性の強い痛みであり、伴う症状も異なるため、ご自身の症状を注意深く観察し、記録しておくことが鑑別のために重要です。
すぐにできる応急処置として安静にして患部を冷やす方法を試してみましょう
こめかみにズキズキとした頭痛を感じた場合、まず試していただきたいのが安静にすることです。
騒がしい場所や明るすぎる照明、強い匂いのする場所などを避け、静かで薄暗い部屋で横になったり、楽な姿勢で座ったりするだけでも、刺激が減り、症状が和らぐことがあります。
特に、血管が拡張して炎症を起こしている状態と考えられる片頭痛の場合には、痛むこめかみやその周辺を冷やすことが効果的です。
冷却ジェルシートや、氷をビニール袋に入れてタオルで包んだ氷枕などを、痛むこめかみや首筋に15分程度当ててみましょう。これにより血管が収縮し、炎症が抑えられ、痛みが軽減されることがあります。
ただし、緊張型頭痛の場合は、筋肉の緊張を和らげるために温める方が効果的な場合もあります。どちらが楽になるか、ご自身の感覚で試してみるのも一つの方法ですが、拍動性の強い痛みであればまず冷やすことを優先しましょう。
リラックスできる環境を整えて十分な睡眠時間を確保することが重要です
ストレスや心身の疲労が頭痛の大きな原因となっている場合、何よりも心と体をリラックスさせることが大切です。
ぬるめのお風呂(38~40度程度が目安)にゆっくりと浸かることは、血行を促進し筋肉の緊張を和らげるだけでなく、副交感神経を優位にして心身をリラックスさせる効果があります。
また、好きな音楽を静かに聴いたり、ラベンダーやカモミールといった鎮静作用やリラックス効果のあるアロマオイルを使ったアロマテラピーを取り入れたりするなど、ご自身に合ったリラックス方法を見つけましょう。
質の高い睡眠を十分にとることも、頭痛の予防・改善には不可欠です。
寝る前にカフェインを多く含む飲み物(コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなど)を摂取したり、スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトを長時間見続けたりすることは、交感神経を刺激し覚醒させてしまうため避けましょう。
寝室の照明を暗くし、静かで快適な温度・湿度を保つなど、睡眠環境を整え、できるだけ毎日同じ時間に寝起きする規則正しい睡眠習慣を心がけることが、自律神経の安定と睡眠時間の確保に繋がり、頭痛の予防にもなります。
緊張型頭痛が1週間続く場合に考えられる具体的な原因の詳細について解説します
こめかみ頭痛の中でも特に発生頻度が高いとされる緊張型頭痛ですが、なぜ1週間もの間、不快な症状が続いてしまうのでしょうか。
ここでは、緊張型頭痛が長引く場合に特に考えられる具体的な原因について、さらに詳しく掘り下げて解説します。
原因を正しく、そして深く理解することで、より効果的な対策や予防法を講じることが可能になります。
長時間同じ姿勢での作業やデスクワークによる筋肉の持続的な緊張が考えられます
現代の生活様式では、仕事や学業、あるいは余暇の時間において、パソコンやスマートフォンを長時間使用する機会が非常に増えています。
これらの作業を行う際、無意識のうちに画面に顔を近づけて前かがみの姿勢になったり、ディスプレイを凝視するために首や肩に不必要な力が入ったりしがちです。
このような不自然な姿勢が長時間続くと、首、肩、背中にかけての筋肉、特に頭部を支える重要な筋肉群が持続的な緊張状態に置かれます。
筋肉が常に緊張していると、その部分の血行が悪くなり、酸素や栄養素の供給が滞る一方で、疲労物質(乳酸など)が蓄積しやすくなります。その結果、頭部を締め付けるような、あるいは重苦しい鈍い痛みが特徴の緊張型頭痛が引き起こされるのです。
特に、作業環境が自身の体に合っていない場合(例えば、机の高さが低すぎる・高すぎる、椅子の背もたれが適切に腰をサポートしていない、モニターの位置が視線と合っていないなど)や、作業に集中するあまり適度な休憩を取らずに長時間作業を続けることは、症状を慢性化させ、長引かせる大きな原因となります。
デスクワーク中の簡単ストレッチ
長時間のデスクワークによる筋肉の緊張を和らげるためには、1時間に1回程度、以下のような簡単なストレッチを行うことが効果的です。
- 首のストレッチ:
- ゆっくりと首を右に倒し、右手を頭の上に乗せて軽く負荷をかけながら10~15秒キープします。反対側も同様に行います。
- ゆっくりと首を前に倒し(顎を胸に近づけるように)、首の後ろの筋肉を伸ばして10~15秒キープします。
- 無理のない範囲でゆっくりと首を後ろに倒し(天井を見上げるように)、首の前の筋肉を伸ばして10~15秒キープします。
- 肩のストレッチ:
- 両肩を耳に近づけるようにゆっくりとすくめ、数秒キープした後、ストンと力を抜いて下ろします。これを数回繰り返します。
- 肩をゆっくりと前回し・後ろ回しします(各5回程度)。肘で大きな円を描くように意識すると効果的です。
- 体側のストレッチ:
- 両手を組んで頭上に伸ばし、そのまま上半身をゆっくりと右に倒して体の左側を伸ばし、10~15秒キープします。反対側も同様に行います。この時、深呼吸をしながら行うとより効果的です。
これらのストレッチは、座ったままでも簡単に行えるものばかりですので、作業の合間に積極的に取り入れてみてください。
精神的なストレスや不安感が自律神経のバランスを乱し頭痛を悪化させます
仕事上のプレッシャー、複雑な人間関係の悩み、将来に対する漠然とした不安など、私たちが日々直面する精神的なストレスは、自覚している以上に心身に大きな影響を及ぼします。
ストレスを感じると、私たちの体は防御反応として交感神経系が活発になります。
交感神経が優位になると、血管が収縮して血圧が上昇したり、筋肉が緊張して硬くなったり、心拍数が増加したりします。これは、危険に立ち向かうための「闘争・逃走反応」と呼ばれるもので、一時的なものであれば問題ありませんが、この状態が慢性的に続くと、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが大きく乱れてしまいます。
自律神経のバランスが崩れると、頭痛をはじめ、めまい、不眠、食欲不振、動悸、異常な発汗など、様々な身体的な不調が現れやすくなります。特に、元々不安を感じやすい気質の方や、ストレスを内に溜め込みやすく、うまく発散できない方は、緊張型頭痛が長引きやすい傾向にあると言えるでしょう。
ストレスの原因をできる限り特定し、それに対して適切に対処すること(例えば、信頼できる人に相談する、休息を取る、趣味に没頭するなど)が、頭痛の根本的な改善には不可欠です。
睡眠不足や不規則な生活習慣が身体のリズムを崩し頭痛を引き起こす可能性があります
質の高い十分な睡眠は、日中の活動で疲弊した心身の疲労を回復し、ホルモンバランスを整え、そして自律神経のバランスを正常に保つ上で非常に重要な役割を果たしています。
必要な睡眠時間が慢性的に不足したり、就寝時間や起床時間が毎日バラバラで不規則だったりすると、私たちの体に備わっている体内時計(サーカディアンリズム)が乱れ、自律神経の機能低下やホルモン分泌の異常などを招き、結果として頭痛を引き起こしやすくなります。
また、日中の活動量が極端に少ないことによる体力低下や、逆に過度な運動による身体への負担、偏った食生活、不規則な食事時間なども、生活習慣の乱れとして身体のリズムを崩し、頭痛の誘因となり得ます。
特に、夜更かしをして朝遅くまで寝ているような生活は、体内時計を大きく狂わせる原因となり、頭痛だけでなく、気分の落ち込み、集中力の低下、免疫力の低下など、様々な健康問題を引き起こす可能性があるため、意識して改善することが求められます。
片頭痛が1週間続く場合に考えられる具体的な原因と特徴的な症状について説明します
ズキンズキンとした脈打つような拍動性の痛みが特徴である片頭痛も、場合によっては1週間程度、あるいはそれ以上にわたって症状が長引くことがあります。これは「片頭痛重積状態」と呼ばれることもあり、非常につらい状態です。
ここでは、片頭痛が長引く場合に考えられる具体的な原因と、片頭痛に特有の症状について詳しく説明します。
緊張型頭痛との違いを正確に理解し、ご自身の症状に合った適切な対応策を見つけるための参考にしてください。
特定の食べ物や飲み物あるいは環境の変化が片頭痛の引き金になることがあります
片頭痛は、特定の誘因(トリガー)によって発作が引き起こされることが多い頭痛です。
食事に関連する誘因としては、チョコレート(カカオポリフェノール)、チーズやヨーグルトなどの乳製品、赤ワイン(ポリフェノールの一種であるチラミンやヒスタミンを多く含む)、柑橘類、ナッツ類、あるいはハムやソーセージなどの加工肉に含まれる亜硝酸塩などが挙げられます。
また、カフェインは少量であれば頭痛を和らげる効果がある一方で、過剰に摂取した場合や、日常的に摂取していた人が急にやめた場合(カフェイン離脱)にも片頭痛を引き起こすことがあります。
環境の変化も大きな誘因となり得ます。例えば、天候の変化、特に台風の接近などによる気圧の急激な変動は、片頭痛持ちの方にとって大きな負担となります。
その他にも、強い太陽光や蛍光灯のちらつきといった光の刺激、大きな騒音、特定の匂い(香水、タバコの煙、化学物質の匂いなど)なども、片頭痛を誘発する可能性があります。
これらの誘因は人によって異なり、また同じ人でも体調によって反応が変わることもあります。ご自身の頭痛がどのような状況で起こりやすいかを記録し、パターンを把握することが、誘因を特定し避けるための第一歩です。
頭痛ダイアリーをつけてみよう
自分の頭痛のパターンや誘因を特定するためには、「頭痛ダイアリー」をつけることが非常に有効です。
記録する項目としては、以下のようなものが挙げられます。
- 頭痛が起きた日時:何月何日の何時頃から何時頃までか。
- 痛みの強さ:我慢できないほどの痛みを10として、10段階でどの程度か。あるいは、「軽い」「中程度」「強い」など。
- 痛みの性質:ズキンズキン、ガンガン、締め付けられる、重苦しいなど、具体的に。
- 痛む場所:こめかみ(右・左・両側)、前頭部、後頭部、頭全体など。
- 伴う症状:吐き気、嘔吐、光過敏、音過敏、匂い過敏、めまい、肩こりなど。
- 頭痛が起こる前に気づいたこと(前兆など):閃輝暗点、手足のしびれなど。
- その日の食事内容:特に頭痛の誘因となりそうなものを食べたかどうか。
- 睡眠時間:前日の睡眠時間、睡眠の質など。
- 天候:雨、曇り、晴れ、気圧の変化など。
- ストレスの有無:精神的なストレスを感じる出来事があったか。
- 薬の使用:頭痛薬を飲んだか、飲んだ場合は薬の種類と効果。
- 女性の場合:月経周期との関連(生理何日前、生理中など)。
これらの情報を毎日記録することで、自分なりの頭痛の傾向が見えてきます。
医師に相談する際にも、この頭痛ダイアリーは非常に重要な情報源となり、より的確な診断と治療方針の決定に役立ちます。
手書きのノートでも良いですし、最近ではスマートフォン用の頭痛記録アプリも多数ありますので、利用しやすいものを選んでみましょう。
女性ホルモンの変動が生理周期と関連して片頭痛を引き起こす場合があります
女性の場合、月経(生理)周期に伴う女性ホルモン、特に卵胞ホルモンであるエストロゲンの血中濃度の変動が、片頭痛の大きな誘因となることが知られています。
具体的には、生理が始まる数日前から生理中にかけて、エストロゲンの量が急激に減少する時期に、脳内の血管の収縮や拡張が起こりやすくなり、セロトニンという神経伝達物質のバランスも変化することで、頭痛が悪化するという方が少なくありません。
このような月経周期に関連して起こる片頭痛は「月経関連片頭痛」や「月経時片頭痛」とも呼ばれ、通常の片頭痛よりも痛みが強かったり、持続時間が長かったり、治療薬が効きにくかったりする傾向があると言われています。
また、排卵期(月経と月経の中間あたり)にもエストロゲン濃度が一時的に低下するため、この時期に片頭痛が起こる方もいます。
妊娠中はエストロゲン濃度が高い状態で維持されるため、片頭痛の頻度が減ったり、症状が軽くなったりすることが多いですが、出産後にホルモンバランスが急激に変化することで再び悪化することもあります。
更年期に入り、卵巣機能が低下してエストロゲンの分泌量が不安定になると、片頭痛の頻度や程度が変化することがあり、閉経後は症状が軽減する傾向が見られます。
低用量ピル(経口避妊薬)の服用によって、ホルモンバランスが安定し片頭痛が改善する場合もあれば、逆に悪化する場合、あるいは初めて片頭痛が起こる場合もあるため、ピルの使用に関しては婦人科医や頭痛専門医とよく相談することが推奨されます。
閃輝暗点や感覚異常などの前兆現象を伴うことがあるのが片頭痛の特徴です
片頭痛の中には、特徴的な頭痛が始まる前に「前兆(ぜんちょう)」と呼ばれる特有の神経症状が現れるタイプがあります。これは「前兆のある片頭痛」と呼ばれ、片頭痛患者さん全体の約2~3割に見られると言われています。
最も代表的な前兆は、視覚に関わる症状である「閃輝暗点(せんきあんてん)」です。
具体的には、視野の中心またはその付近に、ギザギザとした光の波(城壁のギザギザ模様に似ていることから「城壁型」と呼ばれることもあります)が見えたり、キラキラとした光の点がちらついたり、あるいは視野の一部が一時的に見えにくくなったり、真っ暗になったりします。この光は徐々に拡大していくこともあります。
視覚的な前兆の他にも、感覚異常として、手や腕、顔の片側がチクチクとしびれたり、感覚が鈍くなったりすることがあります。また、まれに言葉が出にくくなる(失語様症状)や、手足に力が入らなくなる(片麻痺様症状)などの運動障害が前兆として現れることもあります。
これらの前兆は、通常、5分から長くても60分程度続き、前兆が終わると同時、あるいは前兆が消えてから1時間以内に、片頭痛に特徴的なズキンズキンとした拍動性の頭痛が始まります。
前兆がある片頭痛と、前兆がない片頭痛とでは、選択される治療薬や対処法が異なる場合があるため、ご自身に前兆があるかどうか、ある場合はどのような症状かを正確に医師に伝えることが非常に大切です。
こめかみ頭痛が1週間続く場合に考えられる危険な病気の可能性について解説します
ほとんどのこめかみ頭痛は、緊張型頭痛や片頭痛といった、命に直接関わることのない一次性頭痛ですが、稀に脳や血管の異常など、危険な病気が背景に隠れている二次性頭痛の可能性もあります。
特に、今まで経験したことのないような突然の激しい頭痛や、症状が徐々に悪化していく場合、手足の麻痺やろれつが回らないといった神経症状を伴う場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。
ここでは、そのような警戒すべき病気について具体的に解説します。
くも膜下出血や脳腫瘍など命に関わる重大な疾患の初期症状の可能性を否定できません
こめかみを含む頭痛の中でも、特に注意が必要なのは、「突然発症する、これまで経験したことのないような激しい頭痛」です。
これはしばしば「バットで後頭部を殴られたような痛み」あるいは「雷が落ちたような痛み(雷鳴頭痛)」と表現され、くも膜下出血や脳卒中(脳梗塞や脳出血)といった、脳血管の破綻や閉塞によって起こる緊急性の高い病気の典型的な初期症状である可能性があります。
これらの病気では、激しい頭痛に加えて、意識が朦朧としたり、意識を失ったり(意識障害)、吐き気や嘔吐、手足の片側に力が入らない・感覚がない(片麻痺・片側感覚障害)、言葉がうまく話せない・理解できない(失語症)、ものが二重に見える(複視)、けいれんなどを伴うことがあります。これらの症状は、脳内で出血や梗塞が起きた部位によって様々です。
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂が主な原因で、治療が遅れると命に関わったり、重い後遺症が残ったりする可能性が非常に高い危険な状態です。
また、頭痛が数週間から数ヶ月かけて徐々に進行し、特に朝方に強い頭痛が見られたり、吐き気や嘔吐(特に噴水のような嘔吐)、視力障害(ものが二重に見える、視野が狭くなるなど)、手足の麻痺やふらつき、けいれんなどが現れる場合は、脳腫瘍の可能性も考慮しなければなりません。脳腫瘍が大きくなるにつれて頭蓋内の圧力が上昇し、これらの症状が現れます。
これらの症状に一つでも気づいたら、自己判断せずに直ちに救急車を要請するか、脳神経外科や神経内科といった専門の医療機関を受診してください。早期発見と迅速な治療が、予後を大きく左右します。
側頭動脈炎という血管の炎症が高齢者に見られることがありますので注意が必要です
側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん)は、主に50歳以上の高齢者、特に70代以降の方に発症しやすい血管の炎症性疾患で、巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん)とも呼ばれます。
この病気は、全身の比較的太い動脈に炎症が起こりうる病気ですが、特にこめかみ(側頭部)を走行している浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)という血管に炎症が起こりやすいのが特徴です。
症状としては、こめかみ部分のズキズキとした持続的な頭痛や、側頭部を触ると索状物(さくじょうぶつ:硬い紐のようなもの)を触れたり、圧痛(押すと痛むこと)があったりします。また、ものを噛むときに顎の筋肉が痛んだりだるくなったりする「顎跛行(がくはこう)」という特徴的な症状が現れることもあります。
その他にも、原因不明の発熱(微熱が続くことが多い)、体重減少、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛(特に関節リウマチ性多発筋痛症を合併する場合)などの全身症状を伴うことがあります。
側頭動脈炎で最も警戒すべきは、炎症が目の網膜に栄養を送る動脈に及んだ場合に起こる視力障害です。
急激な視力低下や、最悪の場合は失明に至る可能性もあるため、早期の診断と副腎皮質ステロイドによる迅速な治療開始が非常に重要となります。
特に50歳以上の高齢者の方で、これまでとは明らかに違うタイプのこめかみ頭痛が新たに出現し、上記のような症状が見られる場合は、この側頭動脈炎を疑い、速やかにかかりつけ医やリウマチ科、脳神経内科、眼科などの医師の診察を受けるようにしましょう。
側頭動脈炎のチェックポイント
以下のような症状に複数当てはまる場合は、側頭動脈炎の可能性を考慮し、医師に相談することをお勧めします。
- 50歳以上である。
- 最近、新しいタイプの頭痛が始まった(特にこめかみ周辺)。
- こめかみがズキズキと持続的に痛む。
- ものを噛むと顎が痛くなったり、だるくなったりする。
- 原因不明の発熱(特に微熱)が続く。
- 原因不明の体重減少や全身の倦怠感がある。
- こめかみの血管が腫れていたり、触ると硬かったり、痛かったりする。
- 急に視力が低下したり、ものが見えにくくなったりした。
- 血液検査で炎症反応(CRP高値、血沈亢進など)を指摘されたことがある。
これらの症状は、必ずしも全てが現れるわけではありません。
髄膜炎や脳炎などの感染症が原因で頭痛や発熱などの症状が現れることもあります
発熱(多くは38度以上の高熱)、経験したことのないような激しい頭痛、そして吐き気や嘔吐といった症状が急激に現れた場合、注意しなければならないのが髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎(のうえん)といった中枢神経系の感染症です。
髄膜炎は、脳と脊髄を覆っている髄膜という保護膜に、脳炎は脳の実質そのものに、ウイルスや細菌、真菌(カビの一種)などが感染して炎症が起こる病気です。
これらの病気に特徴的な症状として、上記の他に、首の後ろが硬直して曲げにくくなる「項部硬直(こうぶこうちょく)」があります。これは、顎を胸につけようとすると首の後ろが硬くて抵抗があり、痛みを伴う状態です。
また、明るい光を非常に眩しく感じたり(羞明:しゅうめい)、意識が混濁したり、けいれん発作を起こしたりすることもあります。
初期症状は風邪やインフルエンザと似ていることもありますが、頭痛の程度が非常に強く、症状の進行が急速であることが特徴です。
原因となる病原体によっては、重篤な後遺症(聴力障害、視力障害、てんかん、知能障害など)を残したり、命に関わったりすることもあるため、早期診断と適切な治療(原因に応じた抗菌薬や抗ウイルス薬の投与など)が極めて重要です。
疑わしい症状がある場合は、自己判断で様子を見ることなく、直ちに医療機関(内科、神経内科、救急外来など)を受診し、必要な検査(髄液検査など)と治療を受ける必要があります。
医療機関を受診すべきタイミングと何科を受診すればよいか具体的に説明します
1週間も続くこめかみ頭痛は、原因が何であれ、日常生活に大きな影響を与えていることでしょう。
市販薬で一時的に痛みが和らいでも、根本的な原因が解決されなければ、またすぐに再発してしまう可能性があります。自己判断で放置せず、適切なタイミングで医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることが大切です。
ここでは、どのような場合に病院へ行くべきか、そして何科を受診すればよいのかを具体的に説明します。
頭痛の程度が徐々に悪化したり日常生活に支障をきたしたりする場合は受診を検討しましょう
市販の鎮痛薬を数日間服用しても効果が全く感じられない、あるいは一時的に症状が良くなってもすぐに頭痛が再発してしまうような場合や、頭痛の強さが日を追うごとに増していく、痛む頻度が増えているなど、症状が悪化傾向にある場合は、医療機関の受診を考えるべき重要なサインです。
また、頭痛のせいで仕事や学業に集中できない、家事や育児が手につかない、趣味や楽しみにしていた活動ができないなど、日常生活に具体的な支障が出ている場合も、専門医に相談することをおすすめします。
痛みを我慢し続けることは、症状そのものを悪化させる可能性があるだけでなく、精神的なストレスも増大させ、さらなる体調不良を招く悪循環に陥ることもあります。つらい症状は一人で抱え込まず、早めの対応が肝心です。専門家の助けを借りることを躊躇しないでください。
今まで経験したことのないような激しい頭痛や突発的な頭痛はすぐに医療機関へ行きましょう
「これまでに経験したことのないような、人生で最悪の頭痛」「突然、バットで殴られたような、あるいはハンマーで叩かれたような激しい痛み」と表現されるほどの突発的で強烈な頭痛が起こった場合は、一刻を争う可能性があります。
このような頭痛は、くも膜下出血や脳出血、脳動脈解離といった、脳血管の緊急を要する病気の典型的な兆候です。
もし、このような激しい頭痛に加えて、意識が朦朧とする、意識を失う、手足に力が入らない、言葉がうまく話せない、激しい嘔吐があるなどの症状が一つでも伴う場合は、迷うことなく直ちに救急車を呼ぶか、周囲の人に助けを求めて速やかに医療機関(救急外来など)を受診してください。
これらの疾患は、治療開始までの時間が予後を大きく左右するため、自己判断で様子を見ることは絶対に避けなければなりません。「少し休めば治るかも」といった安易な考えは非常に危険です。
頭痛に伴って発熱や痺れろれつが回らないなどの症状がある場合は専門医の診察が必要です
こめかみ頭痛に加えて、以下のような症状が一つでも現れた場合は、単なる一般的な頭痛ではない可能性があり、より詳しい検査と専門的な治療が必要となることがあります。
- 38度以上の高熱が続く、あるいは悪寒戦慄(寒気と震え)がある(髄膜炎や脳炎などの感染症の可能性)
- 手足の片側あるいは両側にしびれや麻痺を感じる、力が入らない(脳卒中や脳腫瘍などの可能性)
- 言葉がもつれてうまく話せない(ろれつが回らない)、他人の言うことが理解しにくい(失語症の可能性)
- ものが二重に見える(複視)、視野の一部が欠ける、視力が急に低下する(脳神経の異常や脳腫瘍、側頭動脈炎などの可能性)
- まっすぐ歩けない、ふらつく、めまいがひどい(小脳や脳幹の異常の可能性)
- けいれん発作を起こした(てんかん、脳卒中、脳腫瘍、感染症など様々な原因の可能性)
- 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い(意識障害の可能性)
これらの症状は、脳腫瘍、髄膜炎、脳炎、脳梗塞や脳出血といった脳卒中など、重篤な疾患のサインであることも考えられます。
このような場合は、速やかに脳神経外科や神経内科、あるいは総合病院の救急外来など、専門的な診断と治療が可能な医療機関を受診するようにしてください。
危険な頭痛のサイン(レッドフラッグサイン)
国際頭痛分類では、より深刻な二次性頭痛(何らかの病気が原因で起こる頭痛)の可能性を示唆する警告兆候として「レッドフラッグサイン」が提唱されています。
以下のようなサインが見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、精密検査を受けることが強く推奨されます。
- Systemic symptoms or signs (全身症状や徴候):発熱、体重減少、項部硬直、皮膚の発疹など
- Neurologic symptoms or signs (神経症状や徴候):意識障害、麻痺、しびれ、ろれつ困難、視覚異常、けいれんなど
- Onset (発症様式):突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)、50歳以降に初めて起きた頭痛
- Older age of onset (高齢発症):50歳以降に初めて、または新しいタイプの頭痛が始まった
- Pattern change (頭痛パターンの変化):以前からの頭痛の頻度や程度が急に変わった、徐々に悪化する頭痛、体位によって変わる頭痛
- Progressive headache (進行性の頭痛):徐々に悪化し続ける頭痛
- Precipitated by Valsalva maneuver (バルサルバ法で誘発される頭痛):咳、くしゃみ、いきみなどで誘発・悪化する頭痛
- Postural aggravation (体位による悪化):立っていると悪化し、横になると改善する頭痛(低髄液圧症候群など)、またはその逆
- Papilledema (うっ血乳頭):眼底検査で視神経乳頭の腫れが見られる(頭蓋内圧亢進の兆候)
これらの頭文字をとって「SNOOPPPPs」と覚えることもあります。
一つでも当てはまる場合は注意が必要です。
まずはかかりつけ医に相談するか頭痛外来や脳神経内科脳神経外科を受診しましょう
どの診療科を受診すればよいか迷った場合は、まずは普段からご自身の健康状態を把握してくれているかかりつけ医(一般内科や家庭医など)に相談してみるのが良いでしょう。
かかりつけ医が症状や状況を総合的に判断し、必要に応じて適切な専門診療科や医療機関を紹介してくれます。
頭痛を専門的に診断・治療してくれる診療科としては、主に頭痛外来、神経内科、脳神経外科などがあります。
頭痛外来は、文字通り頭痛を専門に扱う外来で、頭痛専門医が詳細な問診や検査を通じて診断を行い、薬物療法だけでなく生活指導も含めた包括的な治療を提供します。慢性的な頭痛に悩んでいる方や、これまでの治療で効果がなかった方には特におすすめです。
神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、筋肉の病気を専門とする内科系診療科です。片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛の診断・治療はもちろん、脳卒中、髄膜炎、脳炎、神経難病など、頭痛の原因となりうる様々な神経疾患の鑑別と治療を行います。
脳神経外科は、主に手術的治療が必要となる脳や脊髄の病気を扱う外科系診療科です。くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、頭部外傷など、緊急性の高い疾患や、手術によって治療が可能な頭痛の原因疾患を診断・治療します。
特に、頭痛が慢性的に続いている場合や、市販薬ではコントロールできない場合、原因がはっきりしない場合は、これらの専門医の診察を受けることで、より的確な診断と、個々の患者さんに合わせた最適な治療が期待できます。
病院で行われるこめかみ頭痛の検査方法と具体的な治療法について詳しく解説します
医療機関を受診すると、医師はまず患者さんの症状や状況を詳しく聞き取る問診を行い、必要な身体診察を行います。
その上で、頭痛の原因を正確に特定するために、必要に応じて様々な検査(画像検査、血液検査など)が実施されます。そして、その診断結果に基づいて、原因や頭痛のタイプに合わせた最も適切な治療法が選択されます。
ここでは、病院で行われる代表的な検査方法と、こめかみ頭痛に対する具体的な治療法について詳しく解説します。
医師による詳細な問診や神経学的診察で頭痛のタイプや原因を特定します
頭痛の診断において、最も基本かつ重要なのは、医師による丁寧な問診です。
医師は、患者さんからの情報をもとに、頭痛の性質や背景にある可能性のある疾患を推測していきます。具体的には、以下のような内容について詳しく聞き取ります。
- 頭痛の発症時期と経過:いつから頭痛が始まったのか、初めての頭痛か、以前から繰り返しているのか、徐々に悪化しているのか、など。
- 痛みの性質:ズキンズキンと脈打つような痛みか、締め付けられるような痛みか、ガンガンするような痛みか、重苦しい痛みか、など具体的な表現。
- 痛みの強さ:日常生活にどの程度支障があるか、10段階評価(0が無痛、10が想像しうる最悪の痛み)でどの程度か、など。
- 痛む場所(部位):こめかみ(右か左か両方か)、前頭部、後頭部、頭全体、目の奥など、具体的にどこが痛むか。
- 頭痛の頻度と持続時間:1ヶ月に何回くらい起こるか、1回の頭痛は何時間くらい続くか(数分、数時間、数日など)。
- 頭痛以外の随伴症状:吐き気、嘔吐、光や音、匂いに対する過敏さ、めまい、肩こり、目の充血、鼻水、涙、前兆(閃輝暗点など)の有無。
- 頭痛を悪化させる要因や軽減させる要因:動くと悪化するか、安静にすると楽になるか、特定の食べ物や飲み物、ストレス、睡眠不足、天候、月経周期などが関連するか。
- 既往歴と現在の健康状態:過去にかかったことのある病気、現在治療中の病気(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)、頭部外傷の経験、アレルギーの有無。
- 服用中の薬:市販薬、処方薬(ピルやホルモン剤も含む)、サプリメントなど、現在使用しているもの全て。
- 家族歴:血縁関係のある家族に、同じような頭痛持ちの人がいるか(特に片頭痛は遺伝的素因が関与することがあります)。
- 生活習慣:睡眠時間や質、食事の内容や時間、飲酒の習慣と量、喫煙の有無、運動習慣、仕事の内容やストレス状況など。
これらの詳細な問診に加えて、意識状態の確認、眼球運動や瞳孔の対光反射(光を当てたときの瞳孔の反応)、顔面の感覚や表情筋の動き、手足の運動機能(筋力、協調運動)や感覚、腱反射などを調べる神経学的診察も行い、脳や神経系に明らかな異常がないかを確認します。
これらの問診と診察から得られた情報をもとに、医師は頭痛のタイプ(緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛などの一次性頭痛か、あるいは何らかの疾患が原因となっている二次性頭痛か)を鑑別し、他の重大な病気の可能性を判断していきます。
必要に応じてCT検査やMRI検査などの画像診断で脳の状態を詳細に調べます
問診や神経学的診察の結果、くも膜下出血、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血といった脳の器質的な病気が疑われる場合や、頭痛の原因をより詳しく、そして正確に調べる必要があると医師が判断した場合には、CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)検査やMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)検査といった画像診断が行われます。
CT検査は、X線を使って体の断面を撮影する検査で、比較的短時間(数分程度)で脳全体の画像を撮影することができます。
特に急性期の脳出血やくも膜下出血、大きな脳梗塞、脳腫瘍、頭蓋骨骨折などの有無を迅速に調べるのに優れています。緊急性が高い場合や、MRI検査が禁忌(例えば、心臓ペースメーカーを装着しているなど)の患者さんによく用いられます。
MRI検査は、強力な磁石と電波を使って、より詳細な脳の断層画像を得ることができる検査です。
CT検査では分かりにくい微細な病変(小さな脳梗塞や脳腫瘍など)や、脳幹部や小脳といった頭蓋骨に囲まれた部分の異常、脳の炎症性疾患、脱髄疾患などの評価に非常に優れています。また、MRA(MR Angiography)という特殊な撮像法を用いることで、造影剤を使用せずに脳の血管の状態(動脈瘤や血管の狭窄・閉塞など)を詳しく調べることも可能です。撮影時間はCT検査よりも長く、20分から40分程度かかることがあります。
これらの画像検査によって、危険な頭痛の原因となる疾患を見逃さないようにするとともに、頭痛のタイプに応じた適切な治療方針を立てるための重要な情報を得ることができます。どちらの検査が適切かは、医師が患者さんの症状や疑われる疾患に応じて判断します。
CT検査とMRI検査の主な違いと特徴
項目 | CT検査 | MRI検査 |
---|---|---|
原理 | X線 | 強力な磁場と電波 |
撮影時間 | 短い(数分程度) | 長い(20~40分程度) |
X線被ばく | あり | なし |
得意な領域 | 骨、急性期出血、石灰化 | 脳軟部組織、早期脳梗塞、微小病変、血管 |
検査時の音 | 比較的静か | 大きな工事のような音 |
費用(保険適用3割負担の場合の目安) | 約5,000円~10,000円 | 約8,000円~20,000円(造影剤使用などで変動) |
主な利点 | 検査時間が短く、緊急時に有用。 ペースメーカーや体内金属があっても条件により可能な場合がある。 |
放射線被ばくがない。 脳の詳細な構造や小さな病変の描出に優れる。 造影剤なしで血管評価(MRA)が可能。 |
主な欠点 | 放射線被ばくがある。 軟部組織のコントラストがMRIより劣る。 初期の脳梗塞など見つけにくい病変がある。 |
検査時間が長い。 狭い空間に入るため閉所恐怖症の方は困難な場合がある。 心臓ペースメーカーや一部の体内金属がある場合は禁忌。 検査中の音が大きい。 |
どちらの検査にも一長一短があり、医師が患者さんの状態や疑われる病気の種類、緊急性などを総合的に判断して、適切な検査方法を選択します。
不明な点や不安なことがあれば、遠慮なく医師や検査技師に質問しましょう。
緊張型頭痛や片頭痛に対しては薬物療法や非薬物療法が用いられます
緊張型頭痛や片頭痛といった一次性頭痛と診断された場合、その治療は薬物療法と非薬物療法(薬を使わない治療法)を適切に組み合わせて行われることが一般的です。治療の目標は、まず現在の痛みを和らげること(急性期治療)、そして頭痛の頻度を減らし、日常生活への支障を軽減すること(予防療法)です。
薬物療法では、痛みが起こった時に使用する急性期治療薬と、頭痛の頻度を減らすために定期的に使用する予防薬があります。
急性期治療薬としては、緊張型頭痛にはアセトアミノフェンや、イブプロフェンやロキソプロフェンナトリウム水和物といった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが用いられます。片頭痛の急性期治療には、これらの鎮痛薬に加えて、拡張した脳血管を収縮させ、血管周囲の炎症を抑えることで片頭痛の痛みを特異的に和らげるトリプタン製剤(注射薬、点鼻薬、内服薬があります)が第一選択薬としてよく用いられます。最近では、ジタン系薬剤やCGRP受容体拮抗薬といった新しい作用機序の急性期治療薬も登場しています。
頭痛の頻度が非常に高い場合や、急性期治療薬だけでは十分にコントロールできない場合には、予防薬が処方されることがあります。予防薬には、抗うつ薬(アミトリプチリンなど)、抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム、トピラマートなど)、カルシウム拮抗薬(ロメリジンなど)、β遮断薬(プロプラノロールなど)といった内服薬のほか、片頭痛に対しては月に1回の注射で効果が期待できるCGRP関連抗体薬といった新しいタイプの予防薬も使用可能になっています。
非薬物療法としては、生活習慣の改善指導(規則正しい睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など)、ストレスマネジメント(リラクゼーション法の習得、ストレスコーピングなど)、理学療法(緊張型頭痛に対するストレッチ、マッサージ、温熱療法など)、認知行動療法などがあり、これらは薬物療法の効果を高め、頭痛の根本的な改善を目指す上で非常に重要です。患者さん一人ひとりの症状やライフスタイル、頭痛のタイプに合わせて、最適な治療法が選択されます。
原因となる疾患が特定された場合はその病気に対する専門的な治療が行われます
画像検査(CTやMRI)や血液検査、髄液検査などの結果、くも膜下出血、脳腫瘍、側頭動脈炎、髄膜炎・脳炎といった、頭痛の原因となる特定の病気(二次性頭痛)が判明した場合は、その原因疾患に対する専門的な治療が最優先されます。
例えば、くも膜下出血であれば、脳動脈瘤の破裂が原因であることが多いため、再出血を予防するために緊急手術(開頭クリッピング術や血管内コイル塞栓術など)や集中治療室での厳重な管理が必要になることもあります。
脳腫瘍であれば、腫瘍の種類や大きさ、位置、患者さんの状態などを総合的に評価し、手術による腫瘍の摘出、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)などが単独または組み合わせて検討されます。
側頭動脈炎の場合は、炎症を抑え、視力障害などの合併症を防ぐために、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)による薬物治療が中心となります。多くの場合、高用量から開始し、症状や検査所見を見ながら徐々に減量していきます。
髄膜炎や脳炎の場合は、原因となっている病原体(細菌、ウイルス、真菌など)を特定し、それに応じた抗菌薬や抗ウイルス薬、抗真菌薬による治療が迅速に行われます。入院による点滴治療や対症療法も必要となります。
これらの治療は、原因疾患を根本的に治療し、それによって引き起こされている頭痛を取り除くことを最大の目的としています。頭痛の症状緩和だけでなく、生命予後の改善や後遺症の軽減にも繋がります。
日常生活でできるこめかみ頭痛の予防策とセルフケアの方法を具体的に紹介します
つらいこめかみ頭痛は、一度起こると日常生活にも大きな影響を与えます。
そのため、できることなら頭痛そのものを未然に防ぎたいものです。ここでは、日常生活の中で少し意識して取り組むことで、頭痛の発生頻度を減らしたり、もし起こってしまっても症状を軽くしたりするために役立つ具体的な予防策やセルフケアの方法を紹介します。
これらの方法は、薬物治療と並行して行うことで、より効果的な頭痛コントロールが期待できます。
適度な運動習慣を取り入れて筋肉の緊張を和らげ血行を促進することが大切です
特に緊張型頭痛の予防と改善において、長時間同じ姿勢でいることが多い方は、意識的に体を動かす習慣を取り入れることが非常に重要です。
ウォーキングや軽いジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、全身の血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。また、定期的な運動はストレス解消にも繋がり、心身のリフレッシュにも役立ちます。週に2~3回、1回30分程度から始めてみましょう。
肩や首周りの筋肉がこり固まっていると感じる方は、作業の合間や起床時、就寝前などに、首や肩をゆっくり回したり、伸ばしたりするストレッチをこまめに行うことも、緊張型頭痛の予防に繋がります。
ただし、片頭痛持ちの方の中には、激しい運動や急な運動が逆に頭痛を誘発してしまうことがあるため注意が必要です。運動の種類や強度については、事前に医師や理学療法士に相談しながら、ご自身に合った、無理のない範囲で、継続的に運動を取り入れることを目指しましょう。
大切なのは、楽しんで続けられる運動を見つけることです。
おすすめの簡単ストレッチ(首・肩)
緊張型頭痛の予防や緩和に役立つ、オフィスや自宅で簡単にできる首と肩のストレッチを紹介します。
- 首の横倒しストレッチ:
- 椅子に座ったまま、あるいは立った状態で、背筋を伸ばします。
- ゆっくりと首を右に倒し、右手を頭の左側頭部に添えて、軽く下に引くようにして首の左側を伸ばします。この状態で15秒~30秒キープします。
- ゆっくりと頭を中央に戻し、反対側も同様に行います。
- 首の前屈・後屈ストレッチ:
- 背筋を伸ばし、ゆっくりと顎を胸に近づけるように首を前に倒し、首の後ろ側の筋肉を伸ばします。この状態で15秒~30秒キープします。
- 次に、無理のない範囲でゆっくりと首を後ろに反らし(天井を見上げるように)、首の前側の筋肉を伸ばします。この状態で15秒~30秒キープします。
- 肩回しストレッチ:
- 両肩を耳に近づけるようにギュッとすぼめて数秒キープし、その後ストンと力を抜いて肩を下ろします。これを数回繰り返します。
- 両肘を軽く曲げ、肩を使って前回し、後ろ回しをそれぞれ5~10回程度、ゆっくりと大きな円を描くように行います。
- 肩甲骨寄せストレッチ:
- 背筋を伸ばし、両肘を90度に曲げて体の横につけます。
- 息を吐きながら、両方の肩甲骨を背中の中央に引き寄せるように意識して胸を開きます。この状態で5~10秒キープします。
- 息を吸いながらゆっくりと元の姿勢に戻します。これを数回繰り返します。
これらのストレッチを、作業の合間や1時間に1回程度、あるいは起床時や就寝前など、生活の中に取り入れてみましょう。
痛みを感じるほど強く伸ばしたり、反動をつけたりするのは避け、気持ち良いと感じる範囲で行うことがポイントです。
バランスの取れた食事を心がけ規則正しい食生活を送ることが予防に繋がります
私たちの体は、食べたものから作られています。そのため、日々の食生活の乱れは、体調不良や頭痛を引き起こす要因の一つとなり得ます。
特定の栄養素が極端に不足したり、逆に特定の成分を過剰に摂取したりすることで、体の機能が不安定になり、頭痛が起こりやすくなることがあります。
特に、片頭痛の予防には、マグネシウムやビタミンB2(リボフラビン)といった栄養素が有効である可能性がいくつかの研究で示唆されています。
マグネシウムは、血管の収縮や神経の興奮を調整する働きがあり、不足すると血管が痙攣しやすくなったり、神経が過敏になったりして頭痛を引き起こすと考えられています。マグネシウムは、ひじきやわかめ、昆布といった海藻類、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類、大豆製品(豆腐、納豆、味噌など)、緑黄色野菜(ほうれん草など)に多く含まれています。
ビタミンB2は、細胞のエネルギー産生に関わる重要なビタミンで、不足すると脳のミトコンドリア機能が低下し、片頭痛発作が起こりやすくなるという説があります。ビタミンB2は、レバー(豚・鶏・牛)、うなぎ、卵、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、葉物野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)、納豆などに多く含まれています。
これらの栄養素を意識して積極的に摂取するとともに、様々な食品をバランス良く取り入れた食事を心がけることが大切です。
また、食事の時間をできるだけ規則正しくすることも重要です。
空腹状態が長く続くと血糖値が下がり、それが片頭痛の引き金になることがあります。逆に、一度に大量に食べる暴飲暴食も胃腸に負担をかけ、体調を崩す原因となります。1日3食、できるだけ決まった時間に、腹八分目を意識して食べることを心がけましょう。
片頭痛の誘因となる可能性のある食品(チョコレート、チーズ、赤ワインなど)については、ご自身の経験から関連が疑われる場合は、摂取を控えるか、少量に留めるなどの工夫も有効です。
十分な睡眠時間を確保し質の高い睡眠をとることで心身の疲労を回復させましょう
睡眠不足は、緊張型頭痛と片頭痛の両方にとって、最も一般的な誘因の一つです。
睡眠中には、脳や体の疲労回復、ホルモンバランスの調整、記憶の整理などが行われており、睡眠が不足するとこれらの機能が十分に果たされず、自律神経の乱れやストレス耐性の低下などを招き、頭痛が起こりやすくなります。
毎日できるだけ同じ時間に寝て同じ時間に起きるという規則正しい睡眠習慣をつけ、ご自身にとって必要な睡眠時間を確保するように心がけましょう。
一般的には成人の場合、6時間から8時間の睡眠が理想とされていますが、必要な睡眠時間には個人差があるため、日中に強い眠気を感じることなく、すっきりと活動できる程度の睡眠時間を見つけることが大切です。
また、睡眠時間だけでなく、睡眠の質を高めることも重要です。
そのために、以下のような点に注意しましょう。
- 寝る前のカフェイン摂取を避ける:コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは覚醒作用があり、入眠を妨げたり睡眠を浅くしたりします。就寝の4時間前からは摂取を控えるのが望ましいです。
- 寝る前のアルコールの飲み過ぎに注意する:アルコールは一時的に寝つきを良くするように感じられますが、実際には睡眠の後半部分で眠りが浅くなり、中途覚醒の原因となります。
- 就寝前のスマートフォンやPCの使用を控える:これらの機器の画面から発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、覚醒させてしまいます。就寝1時間前からは使用を避けるようにしましょう。
- 寝室の環境を整える:寝室は、暗く(光が漏れないように遮光カーテンなどを使用)、静かで(騒音対策)、快適な温度(夏場は25~28℃、冬場は18~22℃程度が目安)と湿度(50~60%程度が目安)に保つようにしましょう。自分に合った寝具(枕の高さ、マットレスの硬さなど)を選ぶことも大切です。
- 就寝前のリラックス習慣を持つ:軽い読書をする、温かいノンカフェインの飲み物を飲む(ホットミルクなど)、ヒーリング音楽や自然の音を聴く、ぬるめのお風呂にゆっくり入る、軽いストレッチをするなど、自分がリラックスできる習慣を取り入れると、スムーズな入眠に繋がります。
質の高い睡眠は、心身の疲労を効果的に回復させ、頭痛の予防に不可欠です。
長時間同じ姿勢を避けこまめに休憩を取り正しい姿勢を意識することが重要です
特にデスクワークや、スマートフォンの長時間使用、あるいは長距離運転など、長時間にわたって同じ姿勢を取り続けることが多い生活は、首や肩、背中の筋肉に大きな負担をかけ、持続的な緊張状態を引き起こし、緊張型頭痛の主な原因となります。
作業に集中していると、ついつい時間を忘れてしまいがちですが、意識的に休憩を挟むことが非常に重要です。
少なくとも1時間に1回、できれば30分に1回程度は作業を中断し、立ち上がって少し歩いたり、軽いストレッチをして体を動かしたり、窓の外の遠くの景色を見たりして目を休ませるようにしましょう。
また、作業中の姿勢そのものを見直すことも大切です。
パソコンを使用する場合は、モニターの位置を適切に調整しましょう。画面の上端が目の高さか、やや下になるようにし、画面との距離は40cm以上離すのが目安です。キーボードやマウスも、肘が約90度に曲がり、肩に力が入らない自然な位置で操作できるように配置します。
椅子は、深く腰掛けて背もたれでしっかりと腰をサポートし、足の裏全体が床につく高さに調整されたものを選びましょう。足が床につかない場合は、フットレストを使用するのも良い方法です。
日頃から、猫背にならないように意識し、顎を軽く引いて背筋を伸ばして座ることを心がけるだけでも、首や肩への不必要な負担が軽減され、筋肉の過度な緊張を防ぎ、頭痛の予防に繋がります。
立っている時も、片足に体重をかけすぎたり、反り腰になったりしないよう、お腹に軽く力を入れて、頭のてっぺんから糸で吊られているようなイメージで、まっすぐな姿勢を意識しましょう。
こめかみ頭痛に効果的な市販薬の選び方と使用上の注意点について解説します
急なこめかみ頭痛に襲われたとき、すぐに医療機関を受診できない場合などには、市販の鎮痛薬(OTC医薬品)が一時的な痛みを和らげるための心強い味方になります。
しかし、薬局やドラッグストアには様々な種類の鎮痛薬が並んでおり、どれを選べば良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。ここでは、こめかみ頭痛に効果的な市販薬の選び方のポイントと、安全に、そして効果的に使用するための注意点について詳しく解説します。
ただし、市販薬はあくまで対症療法であり、原因を根本から治すものではないことを理解しておくことが大切です。
自分の頭痛のタイプや症状に合わせて薬剤師に相談して適切な薬を選びましょう
市販の鎮痛薬には、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、アスピリン(アセチルサリチル酸)、エテンザミドなど、様々な有効成分が含まれています。
それぞれの成分には、鎮痛効果の強さ、炎症を抑える効果の有無、作用の速さ、副作用の種類や頻度などに違いがあります。
例えば、アセトアミノフェンは、比較的副作用が少なく、胃腸への負担も軽いため、空腹時にも服用できるものが多いですが、炎症を抑える効果は他の成分に比べて穏やかです。お子様や妊娠中・授乳中の方でも比較的安全に使用できるとされていますが、必ず医師や薬剤師に確認が必要です。
イブプロフェンやロキソプロフェンナトリウム水和物(第1類医薬品)、アスピリンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類され、炎症を抑える効果が高く、ズキズキとした強い痛みにも効果が期待できますが、胃腸障害(胃痛、胃もたれ、消化管出血など)や腎機能障害といった副作用に注意が必要です。特に空腹時の服用は避けるのが一般的です。ロキソプロフェンナトリウム水和物は、薬剤師からの説明を受けないと購入できない第1類医薬品です。
また、これらの主成分に加えて、鎮痛効果を高めるために無水カフェインや鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素など)、あるいは胃を守るための制酸剤などが配合されている複合薬もあります。
自分の頭痛がどのようなタイプなのか(締め付けられるような緊張型か、ズキンズキンと脈打つような片頭痛かなど)、どのような症状が付随しているのか(吐き気はあるか、光や音がつらいかなど)、他に服用している薬はあるか、アレルギー歴はあるかといった情報を、薬局の薬剤師に詳しく伝え、相談しながら、ご自身の症状や体質に合った適切な薬を選ぶことが非常に大切です。
薬剤師は薬の専門家ですので、遠慮なく質問し、アドバイスを求めましょう。
市販の鎮痛薬の主な有効成分と特徴のまとめ
有効成分 | 分類 | 主な特徴 | 注意点など |
---|---|---|---|
アセトアミノフェン | 解熱鎮痛薬 | ・作用は比較的穏やか ・解熱、鎮痛作用あり ・抗炎症作用は弱い ・胃腸への負担が少ない ・空腹時でも服用可能な製品が多い ・小児や妊婦・授乳婦にも比較的安全とされる(医師・薬剤師に要相談) |
・過量服薬で肝障害のリスク ・他のアセトアミノフェン含有製剤との併用に注意 |
イブプロフェン | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | ・解熱、鎮痛、抗炎症作用あり ・効果が比較的速い ・様々な強さの製品がある |
・胃腸障害(空腹時を避けるなど) ・喘息(アスピリン喘息など)の既往がある場合は注意 ・腎機能障害 |
ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | ・解熱、鎮痛、抗炎症作用が強い ・効果発現が速い(プロドラッグ製剤で胃への負担を軽減する工夫がされているものもある) ・第1類医薬品(薬剤師の説明と情報提供が必要) |
・胃腸障害(空腹時を避けるなど) ・喘息の既往がある場合は注意 ・腎機能障害 ・長期連用は避ける |
アスピリン(アセチルサリチル酸) | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | ・解熱、鎮痛、抗炎症作用あり ・血液をサラサラにする作用も持つ |
・胃腸障害(空腹時を避けるなど) ・アスピリン喘息のリスク ・ライ症候群のリスクがあるため、原則15歳未満の小児には使用しない ・出血傾向のある人は注意 |
エテンザミド | 非ピリン系解熱鎮痛薬 | ・解熱、鎮痛作用あり ・他の鎮痛成分と配合されることが多い |
・副作用は比較的少ないとされるが、胃腸障害などに注意 |
これら以外にも、鎮痛効果を助ける目的で無水カフェイン(血管収縮作用、眠気覚まし)、鎮静作用のあるアリルイソプロピルアセチル尿素やブロモバレリル尿素(神経の高ぶりを抑える)、あるいは胃粘膜を保護する成分などが配合されている場合があります。
ご自身の症状や体質、他に服用している薬との飲み合わせなどを考慮し、薬剤師とよく相談して最適な薬を選びましょう。
用法用量を守り長期間の連続使用や過剰な摂取は避けるようにしましょう
市販の鎮痛薬は、適切に使用すればつらい頭痛の症状を一時的に和らげるのに役立ちます。しかし、その使用方法を誤ると、効果が得られないばかりか、思わぬ副作用を招いたり、かえって頭痛を悪化させたりする危険性があります。
まず最も重要なのは、薬の説明書(添付文書)に記載されている用法・用量を厳守することです。
早く効かせたいからといって一度に定められた量を超えて服用したり、効果が感じられないからといって短時間のうちに何度も追加で服用したりすることは絶対に避けてください。過剰摂取は、胃腸障害、肝機能障害、腎機能障害などの重篤な副作用のリスクを高めます。
また、市販の鎮痛薬を長期間にわたって連続して使用することも問題です。
痛みが続くからといって安易に薬に頼り続けると、体が薬に慣れてしまって効果が薄れたり、依存性が生じたりすることがあります。さらに深刻なのは、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」という状態を引き起こす可能性があることです。
これは、鎮痛薬を頻繁に(目安として月に10日以上、あるいは特定の鎮痛薬では月に15日以上)使用することで、かえって脳が痛みに敏感になり、ほぼ毎日頭痛が起こるようになってしまうという、非常に治療が難しい状態です。この悪循環に陥らないためにも、市販薬の使用は、あくまで一時的な痛みの緩和にとどめ、漫然と使い続けないようにしましょう。
目安として、市販の鎮痛薬を月に10日以上、あるいは週に2~3回以上使用している状態が3ヶ月以上続くようであれば、薬剤の使用過多による頭痛の可能性も考慮し、頭痛専門医に相談することを強くおすすめします。
薬を飲んでも症状が改善しない場合や悪化する場合は医療機関を受診してください
市販の鎮痛薬を、定められた用法・用量を守って適切に服用しても、こめかみ頭痛の症状が全く改善しない、あるいは一時的に痛みが和らいでもすぐにぶり返してしまう、むしろ痛みがますます強くなる、頭痛の頻度が増えるなどの場合は、自己判断で同じ薬を使い続けたり、他の種類の市販薬を試したりするのは危険です。
その頭痛の原因が、市販薬では対応できないような病気(例えば、片頭痛の程度が重い、あるいは二次性頭痛など)である可能性や、すでに薬剤の使用過多による頭痛に陥っている可能性などが考えられます。
また、これまで経験したことのないような激しい頭痛や、発熱、手足のしびれ、ろれつが回らないといった神経症状を伴う場合は、緊急性の高い疾患のサインかもしれません。
このような場合は、速やかに医療機関を受診し、医師による正確な診断と、原因に応じた適切な治療を受けるようにしてください。
市販薬でごまかし続けることは、根本的な解決にはならず、かえって症状をこじらせたり、重大な病気の見逃しに繋がったりするリスクがあります。適切なタイミングで専門家の助けを求めることが、つらい頭痛から解放されるための最も確実な近道です。
こめかみ頭痛と混同しやすい他の顔面痛や頭部の痛みについて知っておきましょう
こめかみ周辺に痛みを感じると、すぐに「頭痛だ」と思いがちですが、実は頭痛(緊張型頭痛や片頭痛など)以外の原因で、こめかみやその周辺に似たような痛みや不快感が生じることがあります。
これらの症状を単なる頭痛と勘違いして対処していると、なかなか改善しないばかりか、根本的な原因が見過ごされてしまう可能性もあります。ここでは、こめかみ頭痛と間違いやすい、他の代表的な顔面痛や頭部の痛みについて解説します。
正確な鑑別診断は医師が行いますが、ご自身の症状をより詳しく把握するための一助としてください。
副鼻腔炎が原因で顔面や前頭部に圧迫感や痛みが生じることがあります
副鼻腔炎(ふくびくうえん)は、鼻の周囲にある骨で囲まれた空洞である「副鼻腔」に炎症が起こる病気で、一般的には「蓄膿症(ちくのうしょう)」という名前でも知られています。
副鼻腔には、おでこの部分にある前頭洞(ぜんとうどう)、両目の間にある篩骨洞(しこつどう)、頬の奥にある上顎洞(じょうがくどう)、そして鼻の最も奥にある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4種類があります。
風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、細菌感染、あるいはアレルギー性鼻炎などが原因で、これらの副鼻腔の粘膜に炎症が起こり、膿や粘液が溜まることで発症します。
主な症状としては、鼻詰まり、色のついた粘り気のある鼻水(黄色や緑色など)、鼻水が喉に落ちる後鼻漏(こうびろう)、咳、痰などの鼻や喉の症状に加えて、炎症が起きている副鼻腔の部位に応じて、顔面痛や頭痛を引き起こすことがあります。
特に、額にある前頭洞や目の間にある篩骨洞に炎症が及ぶと、おでこや目の奥、眉間のあたり、そして時にはこめかみあたりにかけて、重苦しい痛みやズーンとした圧迫感を感じることがあります。この痛みは、頭を下げたり、体を動かしたりすると強くなる傾向があります。
こめかみの痛みに加えて、上記のような鼻の症状(特に色のついた鼻水や鼻詰まり)が長引いている場合は、副鼻腔炎の可能性も考えられますので、耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。レントゲン検査やCT検査、鼻の内視鏡検査などで診断がつきます。
顎関節症によって顎の痛みや口の開けにくさと共にこめかみにも痛みが出ることがあります
顎関節症(がくかんせつしょう)は、文字通り顎の関節(耳のすぐ前あたり、こめかみの下方に位置します)や、その周囲で食べ物を噛むときに使われる筋肉(咀嚼筋:そしゃくきん、側頭筋もその一つです)に何らかの問題が生じる病気です。
代表的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 顎の痛み:口を開けたり閉めたりするとき、食べ物を噛むときに顎の関節やその周りの筋肉が痛む。
- 関節音:口を開け閉めするときに、顎の関節で「カクカク」「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった音がする。
- 開口障害:口が以前よりも大きく開けられなくなる(通常、指が縦に3本入る程度開きますが、それが困難になる)。あるいは、無理に開けようとすると痛む。
顎関節や咀嚼筋は、解剖学的にこめかみ(側頭部)と非常に近接しており、筋肉や神経も関連しているため、顎関節症の症状の一つとして、顎の痛みだけでなく、関連痛としてこめかみ部分にも痛みを感じることがあります。この痛みは、しばしば緊張型頭痛と似たような鈍い痛みや圧迫感として感じられることがあります。
また、無意識の歯ぎしり(特に夜間睡眠中)や、日中の食いしばり(TCH:Tooth Contacting Habit、上下の歯を接触させる癖)がある人は、咀嚼筋が常に緊張状態に置かれ、顎関節にも過度な負担がかかるため、顎関節症や、それに伴うこめかみ痛、さらには緊張型頭痛そのものを引き起こしやすいと言われています。
口を開け閉めする際の顎の異常や、食事中の顎の痛み、歯ぎしり・食いしばりの自覚がある方で、こめかみにも痛みがある場合は、一度、歯科や口腔外科で相談してみるのが良いでしょう。マウスピース(スプリント)治療や、生活習慣指導、開口訓練などが行われます。
顎関節症のセルフチェックリスト
以下の項目に当てはまるものがあるか、チェックしてみましょう。
- 口を大きく開けようとすると、顎の関節(耳の前あたり)やその周りの筋肉が痛みますか? または、以前より口が開きにくくなりましたか?(指を縦に3本入れられますか?)
- 口を開けたり閉めたりするときに、顎の関節で「カクカク」「コキコキ」「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった音がしますか?(音がするだけで痛みがなければ、必ずしも治療が必要とは限りません)
- 硬いものを噛んだり、大きく口を開けてあくびをしたりすると、顎やこめかみ、頬のあたりが痛みますか?
- 朝起きたときに、顎がこわばっていたり、だるかったり、疲れている感じがしますか?
- 普段、無意識のうちに上下の歯を噛みしめていることや、食いしばっていることに気づくことがありますか?
- 家族やパートナーから、夜間の歯ぎしりを指摘されたことがありますか?
- 最近、ストレスを感じることが多かったり、集中して何かに取り組む時間が長かったりしませんでしたか?
- 片側だけで食べ物を噛む癖がありますか?
- 頬杖をつく癖がありますか? うつ伏せで寝ることが多いですか?
これらの項目に複数当てはまる場合は、顎関節症の可能性があります。
自己判断せずに、まずは歯科医師や口腔外科医に相談し、適切な診断とアドバイスを受けることをお勧めします。
三叉神経痛は顔面に激しい痛みが突発的に起こる疾患でこめかみも範囲に含まれます
三叉神経痛(さんさしんけいつう)は、顔面の感覚(触覚、痛覚、温度覚など)を脳に伝える役割を持つ「三叉神経」という神経の通り道に何らかの異常が生じることで、顔の片側に短時間の発作的な激痛が起こる病気です。
三叉神経は、脳幹から出て左右に1本ずつあり、それぞれが3つの枝(第1枝:おでこから目の上、鼻のあたりを支配。第2枝:頬、上唇、上顎の歯茎あたりを支配。第3枝:下顎、下唇、下顎の歯茎、舌の前方2/3あたりを支配)に分かれています。
三叉神経痛の痛みは、しばしば「電気が走るような」「針で刺されるような」「焼けるような」「ナイフで切り裂かれるような」と表現されるほど非常に鋭く、耐え難い激痛です。
この痛みは、通常、数秒から長くても2分程度持続し、その後は完全に痛みが消えますが、1日に何度も、あるいは間隔をあけて繰り返し起こることが特徴です。
また、特徴的なこととして、洗顔、歯磨き、食事(咀嚼や嚥下)、会話、髭剃り、化粧、あるいは顔に冷たい風があたるなどの特定の日常的な動作や軽い刺激が引き金(トリガー)となって、痛みの発作が誘発されることがあります。この痛みを誘発する特定の顔の部位を「トリガーポイント」と呼びます。
三叉神経の第1枝(眼神経)や第2枝(上顎神経)の領域に症状が出る場合、痛みの範囲にこめかみやその周辺が含まれることがあります。そのため、片頭痛や群発頭痛など、他のタイプの頭痛と間違われることもありますが、痛みの持続時間や性質(拍動性か、持続性か、発作性か)、誘発因子などが異なります。
原因としては、脳幹から三叉神経が出る部分で、蛇行した脳血管(動脈や静脈)が神経を圧迫していることが最も多いとされています(特発性三叉神経痛)。稀に、脳腫瘍や多発性硬化症などが原因となることもあります(症候性三叉神経痛)。
顔面にこのような特徴的な激痛発作が繰り返し起こり、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、自己判断せずに脳神経外科や神経内科、ペインクリニックなどの専門医を受診し、適切な診断と治療(薬物療法:カルバマゼピンなどが第一選択薬、神経ブロック、ガンマナイフ治療、手術など)を受けることが重要です。
まとめ 1週間続くこめかみ頭痛は原因に応じた適切な対処と予防が重要です
ここまで、1週間という比較的長期間にわたって続くこめかみ頭痛の様々な原因、ご自身でできる対処法、医療機関での検査や治療、そして日常生活で取り組める予防策について、詳しく解説してきました。
最後に、これまでの内容を改めて総括し、皆さんがつらいこめかみ頭痛の悩みから解放され、より快適で健やかな毎日を送るための重要なポイントを再度お伝えします。
適切な知識を持ち、ご自身の状態に合わせた行動をとることが、症状改善への最も確実な道筋となります。
長引くこめかみ頭痛は自己判断せず原因を特定するために医療機関を受診しましょう
1週間以上もこめかみ周辺の頭痛が続くという状態は、決して軽視できるものではありません。
その背後には、比較的よく見られる緊張型頭痛や片頭痛から、生活習慣に起因するもの、さらには稀ではありますが、くも膜下出血や脳腫瘍、側頭動脈炎といった早期の対応が不可欠な危険な病気が隠れている可能性もゼロではありません。
自己判断で「いつもの頭痛だから大丈夫だろう」と安易に市販の鎮痛薬を飲み続けたり、痛みを我慢し続けたりすることは、症状の慢性化や悪化を招くだけでなく、もし重大な原因疾患があった場合にはその発見や治療開始が遅れてしまうという、取り返しのつかない事態に繋がる恐れがあります。
まずは、勇気を出して医療機関を受診し、医師による正確な診断を受けることが、つらい症状から解放されるための最も重要かつ確実な第一歩です。
特に、これまでに経験したことのないような突然の激しい頭痛や、手足の麻痺、ろれつが回らない、高熱を伴うなどの神経症状が現れている場合は、ためらうことなく直ちに専門医(脳神経外科や神経内科など)に相談してください。
緊張型頭痛や片頭痛の場合は医師の指導のもと適切な治療とセルフケアを行いましょう
医療機関での問診や必要な検査の結果、長引くこめかみ頭痛の原因が緊張型頭痛や片頭痛といった一次性頭痛であると診断された場合は、医師の診断と指導に基づいて、適切な治療を根気強く開始することが大切です。
治療は、痛みが起きた時に症状を和らげるための急性期治療薬(鎮痛薬やトリプタン製剤など)の使用だけでなく、頭痛の頻度や程度を軽減するための予防療法(予防薬の内服や注射、生活習慣の改善など)も非常に重要になります。
薬物療法と並行して、あるいは薬物療法だけに頼るのではなく、生活習慣の見直し(睡眠、食事、運動)、ストレスマネジメント、正しい姿勢の意識、適度なリフレッシュなど、ご自身でできるセルフケアも積極的に取り入れていきましょう。
頭痛ダイアリー(頭痛の記録ノート)をつけて、ご自身の頭痛のパターン(いつ、どのような時に、どんな痛みが、どのくらい続くかなど)を客観的に把握したり、頭痛の誘因となりそうなもの(特定の食品、天候、ストレスなど)を特定し、可能な範囲で避けたりすることも有効なセルフケアの一つです。
医師や薬剤師とよくコミュニケーションを取りながら、二人三脚で、ご自身に最も合った治療法や対処法を見つけ出し、焦らずじっくりと取り組むことが、頭痛をうまくコントロールし、生活の質を向上させるためには不可欠です。
日頃から規則正しい生活習慣を心がけストレスを溜めない工夫をすることが予防の鍵です
頭痛の治療において、医療機関での専門的な治療や薬物療法はもちろん重要ですが、それと同時に、あるいは頭痛そのものを未然に防ぐためには、日頃からの規則正しい生活習慣を確立し、維持することが非常に大切です。
具体的には、以下の点を日常生活の中で意識して心がけましょう。
- バランスの取れた食事を規則正しく摂取する:特定の食品に偏ることなく、主食・主菜・副菜を揃え、野菜や果物、良質なタンパク質などをバランス良く摂取しましょう。食事を抜いたり、暴飲暴食をしたりすることは避け、できるだけ決まった時間に食べるように心がけましょう。
- 質の高い十分な睡眠時間を確保する:毎日できるだけ同じ時間に寝て同じ時間に起きることで、体内時計のリズムを整えましょう。ご自身に必要な睡眠時間を確保し、寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの長時間使用は控えるなど、睡眠の質を高める工夫も大切です。
- 適度な運動を習慣にする:ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動や、首や肩のストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、ストレス解消にも繋がります。
- ストレスを上手に管理し、溜め込まない工夫をする:自分なりのリラックス方法(趣味に没頭する、音楽を聴く、入浴、瞑想など)を見つけ、日常生活の中に意識的に取り入れましょう。悩み事は一人で抱え込まず、信頼できる人に相談することも大切です。
- 長時間同じ姿勢を避け、正しい姿勢を意識する:特にデスクワークやスマートフォンの使用時は、こまめに休憩を取り、軽いストレッチなどで体をほぐしましょう。猫背にならないよう、正しい姿勢を意識することも、首や肩への負担を軽減し、緊張型頭痛の予防に繋がります。
これらの一見地味に思えるような日々の小さな積み重ねや工夫が、結果として頭痛の発生頻度を減らし、症状を軽くするための最も基本的かつ効果的な予防策となります。
つらいこめかみ頭痛に悩まされることのない、より快適で健やかな毎日を送るために、今日からできることから少しずつ始めてみましょう。